タグ:中文原書 ( 1 ) タグの人気記事
|
|
2013年 04月 12日 |
【こんな本】

全六十八回 上下本。

最初の「凡例」に「この本は七十回本《水滸》の続きだ」と書いてあります。(凡例ってそういうことを書く部分なのだろうかw)

1940年代の中国には七十回本しか出回ってなかったのかな?と一瞬思ったら、そのあとに「七十回本の後日談には三種類あり、《征四寇》、《後水滸》、《蕩寇志》だ。《水滸》の古本には百回本、百五回本、百十回本などがあり・・・」とちゃんと書いてあったので、百回本etcも読まれていたようです。

張恨水は疎開先には100冊足らずの書物しか持ち出せなかったようで、《水滸》のすべてのバージョンは参照できなかったと断り書きがありました。それでも《宋史》や《金史》を持って逃げたんですね。さすが作家だ。

文体はできるだけ《水滸》に似せるようにしたが、やりすぎると現代の読者に理解不能になるので、まったくの模倣ではないそうです。なかなか上手なパスティーシュになっていて面白かった。

七十回本の続きとはいえ、魯智深の坐化や武松が片腕で敵をやっつける場面は人口に膾炙しているので、話の展開を勝手に変えることはせず、英雄好漢たちの最後はおおむね百回本と同じ。


【内容はこんなの】

七十回本の続きなので、梁山で108人聚義した夜、大宴会で酔っ払った玉麒麟・盧俊義が好漢たちが皆殺しにされる場面を夢で見て汗びっしょりで眼が覚めるところから。「男たちの挽歌」のオープニングみたい。

首尾よく招安のあと、魯智深が坊主は役人になれないと言い出して脱退。他の英雄も各地に散らばって、しばらくは個人の話が続きます。

この小説でいちばん良かったのは孫二娘。
東京で夫の張青と料理屋を経営して繁盛している。

徽宗が宮廷で「お店屋さんごっこ」を開催するというので宮中に呼ばれて、ブースを出店することに。
すると模擬店に乞食が来て食事をめぐんでほしいと頼む。
追い払おうとする孫二娘だが、考えてみれば宮中に乞食がいるはずはない。顔に泥がついているが肌は白く、耳の裏も汚れていないので(さすが孫二娘は眼のつけどころが違う!)きっと皇帝の変装に違いないと気づいて、ご馳走を椀に入れてやると、乞食は黄金をばらまいて去っていった・・・

このあと孫二娘には入宮の命令が下り、徽宗とあわやというところへ張青が!!!という展開を期待したのですが、《水滸》は女色厳禁なので、孫二娘はそのまま家へ帰りましたとさ。つまらんのう・・・


太平を謳歌していた東京の人々でしたが、金が攻め込んできます。
抗日小説なので金=日本です。
魯智深や孫二娘は金兵をバッタバッタと殺しまくりますが(・・・抗日小説ですから・・・、)多勢に無勢、張青が殺されてしまいます。
私は張青のファンなので、日本兵に殺されるのを見るのはつらかった・・・。
孫二娘も重傷を負います。魯智深が連れて逃げようとするのを、張青の遺体を捨てていけないと拒否する孫二娘。
魯智深はやむなく一人で金兵を突破して逃げます。

このあとはほとんど金との戦闘のお話。

梁山の好漢たちは果敢に戦いますが、朝廷の高官たちは腐敗してて愛国心もないので金に負けちゃいます。
徽宗は退位して臣下の張昌明(たぶん記憶違ってる)とかいう人に天下を譲ります。
徽宗が溥儀で、臣下が汪兆銘の暗喩なのかも知れません、分かりません。


孫二娘は生き延びてました。東京で曹正たちと料理店を経営しています。
「金兵に監禁された貴人に食事を運んでくれ」と依頼されて行ってみると、徽宗と皇后がみすぼらしい姿で閉じ込められていました。おいたわしや陛下。
かつて徽宗にもらった黄金をそっと手渡す孫二娘。


原作の《水滸》では好漢たちは金に圧勝しますが、張恨水バージョンではそんな都合よくはいかず、国を蹂躙されて歯噛みしながら一人ずつ退場していきます。悲しい・・・
(でも金はわが国なので悲しいとか呑気なことは言ってられない)


魯智深は史進を連れて出家できる寺を探しもとめるうち、海鳴りを聞いて成仏。
なんか唐突だったわ・・・しかもなぜお供が史大郎?

武松は金の将軍と戦って片腕を失い、宋江と別れの大酒を酌み交わしながら絶命。

宋江は敵に降伏するよう命令されて、李逵と心中。鉄牛けなげだった・・・



面白くないわけではないんですが・・・
でも恋愛小説にしてくれたら大喜びで読んだのに・・・
林冲がほとんど背景だった。張恨水は豹子頭きらいなのかな。
玉麒麟はけっこうピンで出番多かったのに。


前の記事
張恨水 《水滸新伝》 自序


今日の記事はここまでです。多謝光顧!

[PR]