「なんらかの事情」
2013年 05月 28日 |

「なんらかの事情」
岸本 佐知子 (筑摩書房)


ある人が言っている。翻訳者の技量を知りたければ、彼/彼女が日本語で書いたエッセイを読めばいいと。
↑って、いま私がでっちあげたんですけどね。

岸本佐知子の文章のファンです。翻訳も大好き。「変愛小説集」とか変すぎて、こんな小説を読んで訳して出版するなんてどれほど変わった人なんだろうかと勝手に想像して楽しんでいます。


「なんらかの事情」 もいろいろと変なエッセイがたくさん収められているのですが、いちばん頭をぶん殴られた感があったのが


ダース・ベイダーも夜は寝るのだろうか。
二週間ほど前にその考えが浮かんで以来、ずっとダース・ベイダーのことを考えつづけている。
数々の悪の執務を終えて、一日の終わりに自室に下がるダース・ベイダー。それはどこにあるのだろう。


で始まる「ダース考」。
“悪の執務”ですよ、“悪の執務”!!
百歩譲って私が無知で(スター・ウォーズ見たことないから)、ダース・ベイダーの所做所為を「悪の執務」という専門用語をもって表されることを知らないだけだとしても、


執務を終えてダース・ベイダーは自室に下がる。黒マントを脱いでハンガーにかける。手袋を取って台の上に置く。ブーツも脱ぐだろうか。マントの下に着ている、あの鎧みたいなものも脱ぐだろうか。脱ぎながら、何を考えるだろう。私たちが夜、服を脱ぎながらぼんやりと心をさまよわせる、そんな瞬間がダース・ベイダーにもあるのだろうか。

「ダース考」
「なんらかの事情」 岸本 佐知子



「私たちが夜、服を脱ぎながらぼんやりと心をさまよわせる、そんな瞬間」っていう表現は、凡百の小説家を超えてませんか!ダース・ベイダーが意識の流れにのって夜のダブリンにさまよい出てしまいそうよ。


他にもプーチンの代わりに同志ボリス・エリツィンの追悼演説原稿を考えてみたり、「国はこれを不服として」の「国」の人格を想像してみたりとか、言葉によって日常がとつぜん非日常になる散文がたくさん収録されています。

言葉の感覚が鋭いから翻訳家になるのか、翻訳家だから言葉の感覚が鋭くなるのか・・・
翻訳家のエッセイって面白いです。


しかし実はこの本で驚いたことがもう1つあって、奥付に

本書をコピー、スキャニング等の方法により無許諾で複製することは、法令に規定された場合を除いて禁止されています。
請負業者等の第三者によるデジタル化は一切認められていませんので、ご注意ください。


いまはこんな注意書きがついてるんですね。

ところで「第三者」って中国語だと「愛人」(配偶者じゃなくて外偶のほう)を思い浮かべてしまうわけですが、最近は「第三者」を「小三」って愛称(?)で呼ぶんですね。
最初見たときは「中二病」みたいなものか?と思っちゃった。


今日の記事はここまでです。多謝光顧!

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