「音声学・音韻論 (日英語対照による英語学演習シリーズ) 」
2013年 07月 02日 |

「音声学・音韻論 (日英語対照による英語学演習シリーズ) 」
窪薗 晴夫 (くろしお出版)

(記事中、漢語ピンインと英語のアルファベットと発音記号とカナがごっちゃになってますが、ブログ主の頭がごちゃごちゃになっているせいです。)


このあいだ英語の入音(誤)について悩んでいたときに見つけたサイト
「日本語の促音」
の記事を書いておられる窪薗晴夫先生の本を読んでみました。

めちゃくちゃ面白かったです。
主に英語と日本語について書かれているのですが、中国語学習者にも勉強になることがたくさんありました。

日本人はたいてい中国語の“ü”の発音が苦手だと思います。
この本を読むとその理由が分かります。


その一つがウムラウト(umlaut)と呼ばれる前舌・円唇という特徴を持った母音の生起に関するものである。ドイツ語やフランス語、中国語、古英語(7世紀~11世紀)などに見られるこの種の母音は、舌の位置を[i]や[e]と同じ位置に(つまり前舌を高く)したまま、唇を[u]や[o]の発音時と同じように丸くすることによって作り出される。別の言い方をすると、[i]や[e]を発音するつもりで唇を丸くすればよい。この種の音は、舌の動きと唇の形状との間に「前舌・円唇」という不自然な組み合わせを有していることになる。


「音声学・音韻論 (日英語対照による英語学演習シリーズ 」2.6 母音 p.20



“ü”は前舌が高く、唇が丸いんですね。
日本語は「イ」も「ウ」も唇が平たいので“ü”の音を出すのに練習が必要なのでしょう。


もう一つ「前舌・平唇」「後舌・円唇」という相関関係で面白いのが、日本語の「う」という母音である。日本語の「う」は英語などの[u]に比べると円唇性を失ってきていることが知られており、その傾向は特に東日本において強いとされている。このため、日本語教育などにおいては日本語の「う」を後舌の平唇母音([ɯ])と記述しているものも少なくない。後舌・平唇母音というのは上で述べた舌の位置と唇の形状の間の自然な組み合わせに反するもので、前舌・円唇という特徴を持つウムラウトの音と同じく有標な母音ということになってしまう。この分析が正しいならば、日本語の「う」は後舌・円唇という自然な音から後舌・平唇という不自然な音に変化してきたことになり、上で述べた有標・無標という観点から見ると奇妙な変化ということになる。しかしながら、この分析は現代日本語の「う」を後舌・平唇と見なしてしまうことに問題がある。実際に英語の[u]と日本語の「う」の発音を比較してみるとわかるように、日本語の「う」は後舌ではなく、前舌の方へ(つまり「い」の方へ)舌の位置がやや移動している。また日本語の「い」と「う」を連続して発音してみても、舌は前後にそれほど大きく動いていない。これらのことから、日本語の「う」は完全な後舌母音ではなく、前舌と後舌の中間の位置が盛り上がりができた母音と言うことができる。この観察に基づくならば、日本語の「う」は舌の位置と唇の形状の間に見られる自然な相関関係に反する発音ではなく、むしろ、舌の位置が前方へ移動するにつれて円唇性が失われてきた自然な変化とみなすことができるようになる。

「音声学・音韻論 (日英語対照による英語学演習シリーズ 」2.6 母音 p.20



“ü”の音の出し方を説明するときに

中国人:“i”の唇で“i”の音を出しながら唇をだんだん丸くする
日本人:「ウ」の唇で「イ」と言う

ってパターンが多い気がします。
私は唇をだんだん丸くしていく方式のほうが出しやすい。たぶん舌の位置が(自分にとっては)決まりやすいからでしょう。


半母音の説明が分かりやすかった。

母音と子音の境界は明確なものではなく、母音の延長線上に子音があ
り、子音の延長線上に母音があるという関係を成している。調音法の場合には、[i]と[u]の調音からさらに日の開きを狭くして空気が流れる隙問(つまり声道)を狭くすると、半母音([j],[w])や流音([1],[r])などの接近音(approximant)が作り出され、さらに声道を狭めると阻害音(obstruent)が作り出される。接近音とは母音より声道が狭められる
が、摩擦が生じるほどには狭められない音である。[j]や[w]の半母音
(semivowel)と[1]や[r]という流音(liquid)がこの中に含まれる。これに対し阻害音は、摩擦が生じるか(摩擦音)、完全に閉鎖が生じるか(閉鎖音)、あるいは閉鎖が起こった直後に摩擦が生じるか(破擦音)という三つのタイプに分類される。

「音声学・音韻論 (日英語対照による英語学演習シリーズ 」 2.7 子音 p.23




有声音と無声音について。
中国語の“da”“ta”などがどっちも無声音なのはどうしてなのかなーと謎でしたが、ちょっと理解できた気がします。


有声・無声の区別については、状況がやや複雑で、閉鎖音や摩擦音などのような阻害音と、流音や半母音などの接近音を分けて考える必要がでてくる。接近音や鼻音は基本的に母音と同じ振る舞いを見せ、基本的に有声しか現れない。つまり接近音や鼻音にとっては有声が無標の状態である。日本語のナ行、マ行、ヤ行、ラ行、ワ行の子音が有声音であるというのはこのためである。これに対し阻害音の場合には、既に述べたように有声・無声の両方が生じることが多く、この間で対立が生じる。しかし有声と無声のいずれも同じような自然性を持つかというとそうではなく、有声阻害音([d]や[z])より無声阻害音([t]や[s])の方が自然性が高いと言われている。たとえば中国語のように閉鎖音に有声・無声の対立を持たない言語を見てみると、これらの音は無声で出現する。スウェーデン語には無声阻害音と有声阻害音の対立はあるものの、無声摩擦音の一部にしか、対応する有声音は存在しない。無声音はあっても対応する有声音がないという点では、日本語や英語の[h]の音も同じである。一般に、有声阻害音はあるのに無声阻害音はないという状況は観察されないのである。

「音声学・音韻論 (日英語対照による英語学演習シリーズ 」 2.7 子音 p.28




「現代英語の子音の分類表」と「英語の母音体系」の表があまりに便利なので勝手にコピペしました。
問題あれば削除予定

「現代英語の子音の分類表」


「音声学・音韻論 (日英語対照による英語学演習シリーズ 」  p.23


「英語の母音体系」


「音声学・音韻論 (日英語対照による英語学演習シリーズ 」  p.41



まいにち中国語の三宅先生の説明は

口を丸くすぼめ“u”を言ったら、口の形はそのままで意識としては「イ」と言います。
(まいにち中国語テキスト 2013年4月号 p.12)


でした


今日の記事はここまでです。多謝光顧!

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