〔原文で楽しむ古典〕 《水滸伝》 (1)  第七回 花和尚倒拔垂楊柳 豹子頭誤入白虎堂  其一
2013年 03月 11日 |
今日から《水滸》を原文で読みます。

読んでみようと思って困ったのが、資料があんまりないんです。
中国で出てる本も「李卓吾点評」とか「金聖嘆批評」はついてても現代人向けの注釈はあまりないらしく、たまに「參校他本,作分段、標點、注釋,對一些方言俗語、典章文物,和一些難懂的字詞都作了注解和必要的考證。」という素晴らしい本(彩畫本水滸全傳校注(全三冊))を見つけても絶版らしくて悲しい・・・※


そういうわけで、ちくま文庫版の駒田訳と岩波文庫版の吉川訳、そして水管の百家講壇 《新説水滸》だけを頼りに読んでいます。

テキストはネットからコピペしました。(だからテキストが正確なのかどうかもそもそも分からない)
この記事読んでくださるかたは「話半分」くらいのつもりでお願いします。



「第七回 花和尚倒拔垂楊柳 豹子頭誤入白虎堂」の途中から。
魯智深は女性を助けるために人を殺し、出家して東京で野菜畑の番人をやっています。
近所のチンピラを取り巻きにして楽しく暮らしている魯智深。いつものように取り巻きにカンフーを見せてやっていると・・・


(原文)
眾潑皮道:「這幾日見師父演力,不曾見師父使器械,怎得師父教我們看一看也好。」智深道:「說的是。」便去房內取出渾鐵禪杖,頭尾長五尺,重六十二斤。眾人看了,盡皆喫驚,都道:「兩臂膊沒水牛大小氣力,怎使得動?」智深接過來,颼颼的便動,渾身上下沒半點兒參差。眾人看了,一齊喝采。



■泼皮(潑皮) pō pí 流氓;无赖
■不曾 bù céng 没有,从来就没有
■器械 qì xiè 武器
■浑铁(渾鐵) hún tiě 纯铁。
■禅杖(禪杖)chán zhàng
在《水浒传》等古典文学作品中,禅杖是一种兵器,为铲的一种,佛教僧人多持之。长约五尺,通体铁制,两头有刃。一头为新月牙形,月弯处有四个小孔,分穿四个铁环,另一头形如倒挂之钟,长约7寸。尾端两侧各凿一孔,穿有铁环,柄粗寸余。禅杖两头均可使用。
■头尾(頭尾)tóu wěi 最前与最后部分
■臂膊 bìbó 手臂,上肢
■飕(颼)sōu 同“嗖”。象声词,形容迅速通过的声音
■参差(參差)cēn cī 差池;失误
■喝采 hè cǎi 大声叫好赞美。


取り巻きの“潑皮”たちはもともとこの野菜畑から野菜を盗んだり悪いことをしてました。
新任の魯智深に懲らしめられてからは禿驢の大ファンになって毎日遊びに来ています(ドM集団)。

“器械”はキカイじゃなくて武器のことなんですね。
魯智深が使う“器械”は“禪杖”。日本語訳では「錫杖」と訳されてるのを見たことがありますが、百度百科によると僧侶が持つ“禪杖”と武侠小説などに登場する武器の“禪杖”は別物だそうです。上下ともに刃がついてて、どちら側も凶器になります。

(写真は百度百科 禅杖から拝借)


六十二斤(ってどのくらい?)もある武器でポピーたちは「両腕に水牛くらいの力がなけりゃ使えないよ」と驚きます。それを魯智深はひゅうひゅうと(颼sōu颼的)動かしてみせたので、みんなが“喝采”します。
現代中国語ではあまり“喝采”って使わない気がしますが、水滸の世界では何かというと“喝采”するのです。



(原文)
  智深正使得活泛,只見牆外一個官人看見,喝采道:「端的使得好。」智深聽得,收住了手,看時,只見牆缺邊立著一個官人。怎生打扮,但見:
  頭戴一頂青紗抓角兒頭巾,腦後兩個白玉圈連珠鬢環。身穿一領單綠羅團花戰袍,腰繫一條雙搭尾龜背銀帶。穿一對磕瓜頭朝樣皁靴,手中執一把折疊紙西川扇子。
  那官人生的豹頭,環眼,燕頷,虎鬚,八尺長短身材,三十四五年紀。



■活泛 huófan 动作敏捷灵活。
■官人 guānrén 唐朝称当官的人,宋以后对有一定地位的男子的敬称
■端的 duān dì 果真;确实;果然
■皁 zào 同“皂”。黑色
■燕颔(燕頷) yàn hàn 形容相貌威武。颔,下巴。

魯智深が機敏に武器を使っていると塀の外でひとりの“官人”が“喝采”します。水滸世界では役人でなくても“官人”と呼ぶようです。

「端的使得好。」の“端的”は現代語の“真的”と同じ。
褒められた魯智深が手を止めて相手を見ると、相手の格好は・・・というのでずらずらと服装の形容が続くのですが、さっぱり分かりません。日本語訳を見てもあまり見当がつかない・・・

“豹頭,環眼,燕頷,虎鬚”って人間と思えない形容詞ですね・・・
これは《三国演義》の張飛と同じ形容で、もとは《後漢書‧班超傳》の“燕頷虎頸”から来ているそうです(とどっかで読んだ)。
年齢は34,5歳。既婚(3年)こどもはまだいません。



(原文)
口裏道:「這個師父,端的非凡,使的好器械!」眾潑皮道:「這位教師喝采,必然是好。」智深問道:「那軍官是誰?」眾人道:「這官人是八十萬禁軍鎗棒教頭林武師,名喚林沖。」智深道:「何不就請來廝見。」那林教頭便跳入牆來,兩個就槐樹下相見了,一同坐地。林教頭便問道:「師兄何處人氏?法諱喚做甚麼?」智深道:「洒家是關西魯達的便是。只為殺的人多,情願為僧,年幼時也曾到東京,認得令尊林提轄。」



■长短(長短)cháng duǎn 长度
■鎗 qiāng 同“枪(槍)”。刺击用的长矛
■厮 sī 同“厮”。〈形〉 相互
■法讳(法諱)fǎ huì 敬辞。称出家人的法名。
■洒家 sǎ jiā 宋元时关西一带男子的自称。代词。犹“咱”。
■便是 biàn shì 即是,就是。
■关西(關西)guān xī 指函谷关或潼关以西的地区。
■令尊 lìngzūn 称对方父亲的敬词
■提辖(提轄)tí xiá 官名。 宋 代州郡多设置提辖,或由守臣兼任,专管统辖军队,训练教阅、督捕盗贼。

ポピーたちが「この師匠が喝采するなら本当にすごいんですネ!」とおまいらの喝采はただのお世辞かよと突っ込みたくなるような発言をします。ここの紹介方法うまいですよね~。
魯智深が「あの軍官は誰なんだ?」と聞くと、みんなが「八十萬禁軍鎗棒教頭の林武師、名前は林冲ですよ」と答えます。みんな知ってる林武師。

魯智深が「入ってもらって会おうじゃないか」というと林教頭は塀を飛び越えて入ってきます。
“廝見”=“相見”で良いのだろうか。
ドラマの老版も新版も林教頭が塀をひらりと飛び越えてくるので、なぜ門から入らない!?と思ってたんですが、小説に“跳入牆來”と書いてあるのですね。豹子頭は身軽です。

そして、ドラマでは老版も新版もここで一騎打ちが始まるのですが、小説ではおしゃべりするだけだった。
魯智深は出会うと常に一騎打ちするのかと思ってたら、小説では獣子のときだけのようです。


まず魯智深の自己紹介。
“洒家是關西魯達的便是。”
“洒家”は関西出身男子の一人称。日本語訳では「あっし」とか「おいら」とか可愛い。
語尾に“便是”をつけるのも魯智深の特徴。

「人をたくさん殺しすぎたので僧になった」と言ってますが殺したのは一人です。
いいところ見せようとホラ吹いてみたのね。
魯智深は若いころ東京(開封)へ来て林冲の父の林提轄に会ったことがあるそうです。よくとっさに思い出せるもんだ。



(原文)
林沖大喜,就當結義智深為兄。智深道:「教頭今日緣何到此?」林沖答道:「恰纔與拙荊一同來間壁嶽廟裏還香願。林沖聽得使棒,看得入眼,著女使錦兒自和荊婦去廟裏燒香,林沖就只此間相等,不想得遇師兄。」智深道:「洒家初到這裏,正沒相識,得這幾個大哥每日相伴﹔如今又得教頭不棄,結為弟兄,十分好了。」便叫道人再添酒來相待。




■缘何(緣何)yuán hé 因何;为何。
■恰纔 qià shān 1.亦作"恰才"。2.刚刚;刚才。
■拙荊 zhuōjīng 旧时谦称自己的妻子
■岳庙(岳廟)yuè miào 五岳之神的庙宇。特指东岳庙。
■还香愿(還香願)hái xiāng yuàn 求神保佑的人实践对神许下的烧香心愿。 
■使棒 shǐ bàng 弄棒习武。
■入眼 rùyǎn 看着舒服;顺眼;看中
■荆妇(荆婦)jīng fù 对人称己妻的谦词。 


魯智深が父親に会ったことがあると聞いた林冲は(なぜか)大喜びして、すぐに魯智深と義兄弟になります。
私の勘ですが林教頭はかなりのファザコン。
魯智深が兄なのは年齢が上なのか、それともパパの知り合い=目上ということなんでしょうか。
ドラマの新版では林冲が哥哥だったので、上下どっちも楽しめる美味しい設定でした。

林教頭は奥さんと東嶽廟へお参りにきたのです。
“還香願”は日本語訳では「お礼参り」「願ほどき」になっていました。
夫婦そろって何を祈願しに来たんでしょう。ドラマの新版では林娘子はとてもこどもを欲しがっているようでしたが。



・・・このペースだと1回に数ヶ月かかりそう・・・
続きます


下一回
〔原文で楽しむ古典〕 《水滸伝》 (2) 第七回 花和尚倒拔垂楊柳 豹子頭誤入白虎堂  其二


老版は立ち回りが優雅で美しい
水滸 - 林冲 vs 魯智深








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今日の記事はここまでです。多謝光顧!

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