チョップチョップとチョップスティックの謎
2013年 02月 19日 |
まだジョン ル・カレの「スクールボーイ閣下」を読んでいます。
長いのでなかなか終わらない。

返還前の香港での諜報合戦が重要な舞台となっています。
で、“中国通”のイギリス人諜報員が香港人に命令するときに「チョップチョップ(早く早く)」を連発するのでとても気になります。なんじゃ「チョップチョップ」って!?

オックスフォードの解説


chop-chop
Pronunciation: /tʃɒpˈtʃɒp/

Definition of chop-chop
adverb & exclamation
quickly; quick:
‘Two pints, chop-chop,’ Jimmy called

Origin:
mid 19th century: pidgin English, based on Chinese dialect kuaì-kuaì. Compare with chopstick



中国語の方言のkuaì-kuaìが語源、ってことは「快快kuàikuài」のピジン英語なんでしょうか?でもchopとkuaiって発音ぜんぜん違いますよね。chopは入声のようなので広東語由来っぽいんですけど・・・


と思いながら比べろといわれたchopstickの項目を読むと

chopstick
Pronunciation: /ˈtʃɒpstɪk/

Definition of chopstick
noun(usually chopsticks)
each of a pair of small, thin, tapered sticks of wood, ivory, or plastic, held together in one hand and used as eating utensils especially by the Chinese and the Japanese.

Origin:
late 17th century: pidgin English, from chop 'quick' + stick1, translating Chinese dialect kuaìzi, literally 'nimble ones'. Compare with chop-chop


やはりchop=kuaì〔快?〕で「すばやいやつ」のことだと説明されています。
でも筷子の筷は快とは別の漢字なのだが・・・?

あ、そういえば中国語の筷子って忌み言葉だったような気が・・・とwikiを見ると“筷子”の広東語版の解説に

喺古代嘅中國,筷子原本叫做箸,因為廣東話箸同住同音,即係停響度咁解,唔係咁吉利。所以改口叫快,即係停住嘅相反,後嚟直頭用筷字嚟做代表。


とありました(この説明なぜか国語版に載ってない)。
もとは“箸”だったが広東語の“住”(止まる)と同音で縁起が悪いので“快”(早く進む)に言い換えたんですよね。たしか船乗りの忌み言葉だったと聞いたいた記憶が。

だから“筷子”=“快子”という17世紀イギリス人の理解は正しかったんですね。しかし発音の疑問が解けない。

と思ってたのですが、ネットをさまよっていて
今日の英タンゴというブログに

もともとは広東語の「急」が語源となっています。


とあるのを発見。(該当ブログはもう更新しておられないようなので勝手に引用させていただきました)


そらあんた 急(gap1)でんがな!

と17世紀の英国商人にツッコミたくなりましたよ。


gap→chopなるほどねー。
たしかに“急”も“快”も中英辞書ではquick; quicklyになってるわ。

「広東人をせかすのには“急急”chopchopと言えばいい。quick,quickのことだ」と教えられていたイギリス人がいて、“筷子”は 'quickな棒'のことだと説明されてquick=chopだからchopstickなんだな!とはやとちりしてしまったのでしょうか。要は誤訳。(恥ずかしいミス・・・他人のことと思えない)


というわけでチョップチョップとチョップスティックの謎は解けました。

でももうひとつ疑問が出てきてしまった。
17世紀の広東人は「早くしろ」を“快啲啦~”ではなくて“急急”と言ってたのでしょうか?まるでキョンシー映画のようだ。「急急如律令!ハッ!」


辞書によると“急急如律令”は公文書の末尾にも書いたそうです。
商用文書でas soon as possibleの訳語に“急急如律令”を使ってて、半可通の英国商人が“急急”と“快快”を混同したのかも~と思ったりしました。
私もこれからはASAPの代わりに急急如律令を使ってみようと思います。
Please reply to me 急急如律令.←グローバルビジネスパーソンっぽいですな!



と書いているあいだに「スクールボーイ閣下」を読みおわりました。
最初の3/4くらい(←ほとんど)は何を読んでるのかまったく理解できず、うたた寝しながら朦朧と読んでいました。それが下巻の半分をすぎたあたりから急に話が動き出して、あれよあれよと引き込まれて最後まで一気に読みました。
はー、すごかった・・・



(おまけ)
広東語辞書にも箸の由来がのってました。


筷 faai3
The original word for "chopsticks" used to be 箸, pronounced as [zyu6] in Cantonese and [zhu4] in Mandarin, both being exactly the same as 住 is pronounced. 住 has a meaning of "stop" or "cease" which is considered to be inauspicious. The opposite meaning of "stop" is sth like "fast". So 快子 (meaning "fast") was used and is later changed to 筷子 or simply 筷.





急急如律令
汉 代公文常以“如律令”或“急急如律令”结尾,意谓立即按照法律命令办理。后多为道教咒语或符箓文字用以勒令鬼神按符令执行。



長い記事をここまで読んでくださってありがとう。


今日の記事はここまでです。多謝光顧!

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