宮崎市定全集12 水滸伝 「水滸伝的傷痕」
2013年 01月 25日 |
宮崎市定全集12 水滸伝
岩波書店

「水滸伝的傷痕」「宋江は二人いたか」「水滸伝と江南民屋」が収録されています。

水滸伝の後半がつまらない理由がズバリ指摘されていました。

四十回以後が精彩を欠くのは、それから後が軍記物になったのも一つの主な理由である。集団戦争になって了うと、個人の存在が没却されて、個性を発揮する余地に乏しい。作者は努めてこの単調を打破ろうとして、楊雄や慮俊義の家庭騒動を点綴するのであるが、内容も平几で西門慶事件の筆致に比ぶべくもなく、無用の重複だという感を与える。
四十回以後が面白くない他の大きな理由は鼻もちのならない貴族臭である。宣和遺事の呼延綽は何程の地位か分からないが、水滸伝では開国の名将呼延賛の子孫となり、全くその生写しになっている。また花石綱運搬の指使にすぎなかった関必勝は関雲長嫡流の子孫となって、これまた関羽そのままの再来に描こうとしている。尤も既に周密の時から両者の関係が暗示されているが、当時はまさかこんな貴族臭いものではなかったであろう。更に噴飯にたえないのは河北の玉麒麟、慮俊義であって、仰々しい威風の形容は張紙の虎にすぎない。こんな連中がずっと後からのこのこと出てきて、魯智深や武松の上座にむずと坐るのだからやりきれなくなる。市井の豪傑、草沢の英雄から出発した水滸銘々伝は、四十回を過ぎると忽ち貴族化し士大夫化してしまった。

「水滸伝的傷痕」
宮崎市定全集12 水滸伝                                 



「水滸伝的傷痕」って中国語っぽいタイトルですが(傷痕文学みたい)、全文日本語です。

「こんな連中がずっと後からのこのこと出てきて、魯智深や武松の上座にむずと坐るのだからやりきれなくなる。」というのはすべての読者の思いなのではないでしょうか。


そういえば、ドラマの新版《水滸》では席次は呉用と公孫勝が招安準備のために決めたという設定になっていました。朝廷に高値で売りつけるための名簿だから官職や家柄の高い順番なんでしょうね。


今日の記事はここまでです。多謝光顧!

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