『中国語←→日本語翻訳の要領』 (1973年度版)
2012年 10月 09日 |
『中国語←→日本語翻訳の要領』 (1973年度版)
今冨 正巳(光生館)

タイトルに惹かれて図書館で借りました。
最初のほうにこんな説明があります。

[他来,我去。]は実に簡単な中国語であるが、その日本語訳には、1.(彼が来る,私が行く),2.(彼が来て,私が行く),3.(彼が来るから私は行く),4.(彼が来るなら私は行く),5.(彼が来ても私は行く)などがあり、この他にも訳し方はあると思う。

『中国語←→日本語翻訳の要領』 今冨 正巳

出だしがとても良かったので期待しながら読んだのですが、例文が・・・すごすぎるんです。
中国語を打つのが面倒なので日本語部分だけ引用してみると


・アメリカ帝国主義のあらゆる陰謀術策は、すべて失敗を運命づけられている。
・ソ修社会帝国主義の東ヨーロッパにおける植民地支配が危機におちいり・・・
・西ドイツ当局は、ドイツ民主共和国を併呑し、東ヨーロッパに侵略拡張をすすめるかれらの野望を少しもかくさず・・・
・プロレタリア階級独裁を強固にするという目標のために団結しよう。
・血の教訓によって、われわれの多くの同志たちは目が覚め・・・
・毛沢東思想で認識を統一し、足並みを統一し、行動を統一し反動的なブルジョア階級の・・・
・劉少奇及びその一味の党を裏切り国を裏切った犯罪行為を生産する。
・原子爆弾は、アメリカの反動派が人をおどかすために使っているハリコの虎で、見かけはおそろしそうでも、実際には、なにもおそろしいものではない。
etc・・・

もしかしたら途中から普通の文章も出てくるのかもと思って最後まで読みましたが、最後までこんな例文ばかりでクラクラしました。原子爆弾を張り子の虎と豪語できるとは・・・
(「ドイツ民主共和国」というのはいまは亡き東ドイツのことですね。他にも「米帝」「ソ修」など歴史の彼方に埋もれた単語が続々と登場します。)


「让」「叫」についてこんなことが書いてありました。

[让・叫]などの[使]以外の使役介詞の用法は,基本的には[使]と同様である。ただ,現実の現代中国語文,その代表としての人民日報を見ると,使役介詞のうちもっとも用いられているのは[使]であり(略)


奥付を見ると昭和48年発行となっています。
このころ中国語を勉強した人に「昔は教材といえば《人民日報》しかなかった」というお話を伺ったことがありますが、本当のことだったんですね。
いま「現実の現代中国語の代表」に《人民日報》をあげる中国語教師はまずいないでしょう。
時代の移り変わりをひしひしと感じました。

取り上げられている例文も、今見ると「ただの悪文」「単なる下手な文章」もあるのですが、この本ではどの例文も一生懸命弁護して良いところを見つけ出そうとしていて、読んでいて痛々しい気持ちになりました。


アマゾンで検索するとこの本は1988年に新訂版が出ているようです。どこがどう変わったのでしょうか。
機会があれば読んでみたいものです。

今日の記事はここまでです。多謝光顧!

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