「街場の中国論」
2010年 03月 03日 |

内田先生の本はいつも「どーしてこの人こんなに色んなことが分かっちゃうんだろう?」と思わされるのですが、この本も「中国の素人なのにどうしてこんなに分かっちゃうんだろう」と思わされる本です。


私はご存知のとおり、中国問題の専門家でもなんでもありません。(略)ですから、私が中国について知っている知識の量は、平均的日本人の標準からそれほどはずれてはいないだろうと思います。
その「街場のふつうの人だったら、知っていそうなこと」に基づいて、そこから「中国はどうしてこんなふうになったのか?中国では今、何が起こっているのか?中国はこれからどうなるのか?」を推論しようというわけです。
そんなことが可能なのでしょうか。
私は可能だと思います。

まえがき 『街場の中国論』
内田 樹 (ミシマ社)




私は中国についての報道とか見ててどうもしっくりこないことが多いのですが、内村先生の書いてることは、わりと納得できる。とにかく説明が上手い。

2005年の反日デモについて


僕がこういうタイプの自虐的なナショナリストが苦手なのは、この人たちは現に中国で日本大使館に投石したり、日系企業にデモをかけたりしている反日中国人と「同じタイプ」の人間だと思えるからです。(略)
中国や韓国にだって「もう少し冷静になって、日本との長期的な外交関係の安定に配慮したほうがいいんじゃないですか・・・」というようなことを言っている人たちがいるはずです。でも、そういう人たちのことばはメディアには出てこない。それと同じように、「もう少し冷静になって長期的で安定的な外交関係を構築することを考えたほうがいいんじゃないの」と考えている僕のような日本人がいることは、たぶん中国や韓国のメディアは伝えない。(略)
でも、どこの国にも愛国的熱狂のさなかに涼しい顔をして「まあ、少し落ち着いて考えなさいよ」という人は必ずいます。いると信じたい。どの隣国にも必ずいるはずの、そういう「まっとうな人」たちとネットワークすること。国境の両側で熱くなっているナショナリストたちがもたらす災厄を先送りし、最小化するためにできる最良のことは、国境を越えた「大人のネット」を構築することだと僕は思っています。


第1講 チャイナ・リスク-誰が13億人を統治できるのか 『街場の中国論』
内田 樹 (ミシマ社)




題材は中国なんですけど、日本についてもいろいろ「あれってそういうことなのか!」と思えることがあって、いやほんとにこの先生はどうしてこんなに説明が上手いんだろうか・・・

靖国神社の問題について。本題とは離れた部分で思わずヒザをたたきました。


小泉首相自身が言うように、彼の靖国神社の参拝にはとくに中国や韓国を挑発する政治的意図はないと僕は思います(首相の行動を動機づけているのは彼自身も気づいていないアメリカに対する屈折した憎しみだと思います)。けれども、その消息を隣国の人々に理解させることは至難のわざでしょう。

『街場の中国論』
内田 樹 (ミシマ社)



この

彼自身も気づいていないアメリカに対する屈折した憎しみ


ってスゴイ洞察力だと思いませんか。そーいえばアメリカでのあの無邪気そうなはしゃぎっぷりとか思い返すと、ああそうだったのか、と。本人も気づいてないのにスゴイ。



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