唐代の人は漢詩をどう詠んだか―中国音韻学への誘い
2010年 01月 10日 |
タイトル通り唐代の人々は漢詩(というか唐詩ですか)をどんな発音で詠んでいたのか考察する本です。

中国語の音韻について、目からウロコが何枚も落ちるようなことがいっぱい書いてありました。現代中国語の学習者にも有用な本だと思います。

とにかく漢文の素養のない私、最初のほうに「江南春」の訓読が載ってるのですが、


南朝四百八十寺

って

ナンチョウシヒャクハッシンジ


って読むのですね。教えてもらわなければ「なんちょうよんひゃくはちじゅうじ」と読むところでした。

この「十」をなぜ日本語で「シン」と訓読するのかの追及がとても面白かった。べつに日本人が訛ってるとかじゃなくて、ちゃんと中国の学説にのっとって読んでるそうです。
しかし現代中国でもこの部分の「十」は普通と違う発音で読むのでしょうか・・・


こういう本は図表が理解のポイントになりますが、四声の変遷の図表がとても分かりやすい。この本のいちばんの読みどころです。

四声の研究者として陳寅恪の説が引かれてたりして、陳先生いろんな研究してるんですね。


中国語にはかつて「有声音」(日本語でいう濁音、現代の標準中国語はすべて「無声音」で「有声音」はないの)があったようなのですが、その証拠が「群」の日本語音「グン」に残ってるとか面白かった。(いまの標準中国語だと「qun」で無声音)
陳群さんの名前も有声音で発音していたのでしょうか。


最後に杜牧の「江南春」などの復元が載ってます。残念ながら発音は載ってますが音声ファイルがついてません。あとがきにユーチューブで聞けるようにしたいと書いてありましたが。待ち遠しいですね。


この本とは無関係だと思いますが、youtubeに中古漢語で唐詩を朗読してる人たちがいるのを見つけました。

私にはホーロー語に聞こえるが・・・「十」の発音とか。
「月」が「ng-」で始まっててビックリしましたが、客家とかも「ng-」なんですね・・・ちょっと方言研究にハマりそう・・・

他の人は「広東語に聞こえる(by台湾人)」とか「台湾語に聞こえる(by香港人)」とかコメントつけてる。「中国語のどっかの方言」に聞こえるってことでしょうかね。

でも最初は驚くけど、よく聞くとたしかに「將進酒」だと分かりますね。


李白 將進酒 中古漢語朗讀





もっとスゴイのは詩経の上古漢語朗読です。これは・・・イスラム語かと思った・・・

そういえば二重子音については『中国の諸言語―歴史と現況』とかにも書いてありましたが、実際に聞くと衝撃的です。

《關雎》は「レッドクリフ」で関羽が子供たちに教えてた詩ですね、映画では現代中国語でしたが。


《關雎》上古漢語朗讀




これとは別に「上古漢語歌詩経玄鳥」っていうのがアップされてて、それがどういうわけか日本語みたいに聞こえるんですよ。コメントにも日本語みたいとか韓国語みたいとかフランス語みたいって書かれてて、よく見ると作者は日本人のようです。

上古漢語でも「日本口音」って出ちゃうものなのねえ・・・とちょっとしんみりしました。


いっしょうけんめい上古漢語取得してタイムトラベルしても曹操様に「汝何有“矮國口音”邪?」とか指摘されちゃうのかしら。
(「尋秦記」の古天楽は広東語で通じてたようだが)
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